天帝のはしたなき果実、天帝の使わせる御矢
- 作者: 古野まほろ
- 出版社/メーカー: 講談社
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天帝のはしたなき果実(以後「果実」と略)は817ページ、天帝の使わせる御矢(以後「御矢」と略)は603ページ。
ふー、おなかいっぱい。もう食べれません。
「果実」は高校を舞台に繰り広げられるミステリー。「御矢」は大陸横断鉄道内で起こる殺人事件。総じて衒学的(ペダンティック)、薀蓄の嵐。そして英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語で大量に振られたルビ。一部引用。ルビはカッコ内に表記。
角卓(テーブル)には装飾的(デコラティーヴ)なデザインの、紅海色(オールドローズ)の布(クロス)で張られた優雅な椅子が二脚添えられている。
長椅子(ソファ)の対面(といめん)の壁には、丸い黒字のうえに臙脂色(クリムソン)、栗皮茶色(マルーン)、珊瑚色(コーラルピンク)、支那橙色(マンダリンオレンジ)、海松色(オリーヴ)に石灰黄色(ライムライト)を複雑精緻に組み合わせた寄木細工(マーケットリー)。ビアズリーやクリムトのような官能的なタッチで、この客室(キャビン)の主動機(モチーフ)である山羊を描いていた。
「おいおい、おっさん、どうしたんだ、冴えてるぞ!(ブラヴォ、モナンファン、テ・フ・ウ・クウ・クワ)」
本文よりルビのほうが多いぞ。
「古野君、『プーシキン』と『アッサムケルング』、どちらがよろしいかしら」
「B&B(ベジュマンアンドバアトン)とハロッズか---ここはお国に敬意を表して、王室御用達(ロワイヤル)のほうを」
どっちだよ。わかんねーよ。
主人公の名前が著者と同じな時点ですでにメタな香りぷんぷん。
どんでん返しはミステリーでは常套。しかし本格を気取った挑戦状形式に却って惑わされるかも。その幻惑を拒絶する人も多いかもしれないが、ここはこの溢れ出る大量の情報に身を委ね楽しむのだ。
三作目が出ているようで。
- 作者: 古野まほろ
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