ヤバいぜっ!デジタル日本

デジタルガジェット身にまとい世界を駆けめぐるクリエータ高城剛
そんな彼が現在の放送業界、IT、コンテンツなど、そして未来に関して本気モードで語っている。
携帯、ブログ、SNSなど個人が情報を発信する装置ができた今、その気になればいくらでもヤバい(=超楽しい)ことができる時代になった。だからみんなもヤバいことやろうと誘う。
彼が世界中を飛び回るのは、たくさんの人と出会うため、そして多くを見聞きして大量の情報をインプットするため。そして戻ってきてから一気にアウトプット、作品を造りあげる。見た目に似合わず(失礼)努力家である。そしてそれを心から楽しんでいる。

その一方で、現在の放送業界、通信業界、映画業界、アニメ業界などへの批判(というより憂い)を語る。業界通でもあるだけに批判の内容は具体的でとてもリアルである。

  • テレビの内容がインターネットに流されないのはなぜか、それはテレビサイドとしては困っていないから。その必要性すら認識していないから。むしろ流されると困るから。
  • 映画業界の不振の原因はどこにあるのか。それは複雑化した権利関係をまとめるエージェントの不在にある。それに対してアメリカはエージェントによる管理が80年代から行われ、プロデューサ、プロダクションマネージャーが制作に専念できる体制が確立された。
  • 音楽業界。CCCDでコピーガード成功などと言っているうちにiPodの襲来。

話はふくらみ業界個々の批判から日本という国に対する批判へと移る。つまりこのままでは他の国にコンテンツも人材も持って行かれますよ、と。
ただしそんな日本に対しても一縷の望みをかけている。それは国家、地域のブランディングだと言う。具体的には、もっとクリエイティブであれ、ということらしい。すべてとは言わないがコンテンツは解放化へ向けて法的整備も含め進めてほしいと。そうしないと本当に「ヤバい」状況に陥ってしまう、と。
法的規制によりコピーすることが難しくなり、それによってクリエーターが育たなくなることへの不安。その一方でツール類の発達により消費者が情報発信者となれる現状。これをジレンマと感じているのか、クリエーターは別物と考えているのかが本書からは読み取れなかった。
しかし全体を通して感じるのは、普通の人々に対してどう生きていくべきか、という熱いメッセージである。もっとクリエイティブに生きよう。そうすれば自由を得ることができる。それはとても楽しくヤバいことである。でも努力はしなくちゃダメだよ。とにかく物を創り、発信するんだ、と。本人自身が実践しているだけに説得力がある。

最後に、最もインパクトのあった一文。
「どんな大ヒット・コンテンツより、彼氏からのメールの方がすばらしい。」
我々にどんな未来が待ち受けているのだろうか。