アーキテクチャの生態系
- 作者: 濱野智史
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2008/10/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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モノクロの文字だけのシンプルな装丁にこのタイトル。はたしてどのくらいの人が手に取るのだろうか。
本書は、2000年以降のインターネットサービスを生態系になぞらえながら俯瞰する、というものである。
登場するサービスは、Google、2ちゃんねる、はてなダイアリー、Mixi、Youtube、ニコニコ動画、Twitterなどである。
偏っていると感じるだろうか。しかしこれらのサービスはそれまでにはなかった新たなネットへの接し方を(意図的にしろ意図しなかったにせよ)提示したという点で取り上げる価値があったのだろう。
タイトルにあるように「アーキテクチャ」の視点から分析を行っている。「アーキテクチャ」というのは、そう、ローレンス・レッシグ言うところの「アーキテクチャ」である。利用者の気づかないところに仕込まれた仕組み。それ故にユーザに対して自覚を促すことなく、かつコードの力による強力な強制力で縛っていく、そんな仕組み。筆者の独自性としては、このアーキテクチャの強制を必ずしも悪とは見なしていないところにある。それによって盛り上がる部分もあるのだから、と。
個人的には、ニコニコ動画の独特な時間性に関する分析がおおーっ、と衝撃を受けた。ニコニコ動画を見ているユーザは、コメントを書き込んでる人とまるで同時に鑑賞している(かのように)楽しんであるが、実はそのコメントを書き込んだ時間はいま自分が動画を見ている時間とは異なるタイミングである。異なるタイミングで書き込まれたコメント群が動画の再生軸で再構築され、自分の見るタイミングに合わせてコメントが流れる。それにより、時間の制約に縛られることなくコンテンツの質(コメントの量)を上げることができる、など。
全体を通して感じたのは、論旨が首尾一貫しているということ。各サービスを生態系になぞらえるだけでなく、それがなぜ人気があるのか、原因、理由の導き方も生物学的というか。誰かが神の視点からコントロールしているわけではなく、淘汰、創発など複雑な相互干渉をへて暫時的に進んでいく、という基本姿勢が評価高し、です。
Web2.0以降のウェブってどんなんだろ、かといって最近出てきたWeb3.0もどうかな・・・なんて考えている方におすすめです。