新訂 字統

新訂 字統

新訂 字統

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
ついに届きました「字統」の新版。20年ぶりの大幅改定とあっては買わないわけにはいかないでしょう。
著者、白川静の印象は「孤高の人」である。いい意味でも悪い意味でも。彼独自の字源論に反対することはたやすいだろうし、また現に長い間批判され続けてきた。
本書は70歳を超えて発刊された字源辞書である。それぞれの漢字に対して、甲骨文字→金文→篆文 と変化していく過程と字源の解説により成り立っている。
だから見どころとしては2点。

甲骨文字、金文等の文字自体の魅力
こればかりは文章でお伝えできない。象形文字の要素を残しながら不完全であるがゆえに美しいというか、眺めているだけで満足。
解説
賛否両論あるだろうが個人的には70%くらい満足、30%くらい首をかしげる。しかし文字から古代中国の習俗を導き出そうとする執念には恐れ入る。有名なやつを引用。


首と辵(ちゃく)とに従う。古文の字形は首と寸とに従い、首を手(寸)で携える形。金文には首と辵と又(ゆう)とに従う字があり、のちの導の字にあたる。辵(しんにょう)は歩く、行く意。首を手(又)に携えて行く意で、おそらく異族の首を携えて、外に通ずる道を進むこと、すなわち除道(道を祓い清めること)の行為をいうものであろう。道を修祓(しゅうふつ)しながら進むことを導といい、修祓したところを道という。-- 中略 -- すなわち道とは啓行の儀礼で、のちにも旅立つときの道祖という。このようにして啓(ひら)かれたものが道であり、人の安んじて行くところであるから、人の行為するところを道と言い、道徳、道理の意となり、その術を道術、道法といい、存在の根源にあるところの唯一者を道という。

と、この調子で7000文字の解説が続きます。まさに「読む辞書」であり「観る辞書」である。


もちろん漢字の成り立ち、文字自体の意味を追い求めることはソシュール的な、記号の恣意性や共時態と真っ向から対立することは分かっているけど。。


エントリ書きながら思い浮かんだ関連してそうな本の紹介を。

呪の思想―神と人との間

呪の思想―神と人との間

白川静梅原猛の対談集。白川さんの考え方を梅原さんがうまく引き出しています。中国の思想の原点は「呪」であり、祈り、占い、祓い、といった行為に漢字の原点を見ていることがわかります。そのうえで改めて『字統』を読み返すとこれまで見えなかったものが見えてきたり。


隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫)

隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫)

梅原猛さんの本で一番インパクトがあった本。聖徳太子の荒ぶる魂を鎮めるために(なぜ荒ぶる魂となってしまったのかは本書をお読みください)建立されたのが法隆寺であるとする説を唱えた本。強引ながらも読ませる力が強かった。何よりも1000年以上だれの目にも触れることのなかったという救世観音像の美しさが印象的。荒削りながらも、それゆえに製作者の強い意志が感じられるというか。


異人論序説 (ちくま学芸文庫)

異人論序説 (ちくま学芸文庫)

「呪」「祓い」というキーワードを書いているときに真っ先に思い浮かんだのがこの本。(なんか異端児的な学者が続く、、)
民俗学視点から、内部/外部、カオス/コスモス、共同体/異人、などの対立項から国家などの社会の成立、そして「異人」と名付け、排斥することで社会内部の構造を強化するシステム、など幅広く、かつ濃密に論じられています。