カラマーゾフの兄弟 4、5
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でも紹介したように「カラマーゾフの兄弟」は世界最高峰の文学作品である。
複数の出版社から翻訳版が出ているが、最近出た光文社によるものがとてもわかりやすい日本語でもっともお勧めである。
、というのは以前にも書いたこと。
で、光文社版の3巻までを一気に読み終わった感想。
あれ?終わってない。。
そう、当時は1〜3巻が本屋に並んでおり、かつ、新潮社版が「上」「中」「下」の3巻で構成されていることもあり、てっきり光文社版も全3巻であると思っていたのだ。
本屋に行ったら4、5巻がありました。軽く殺意が芽生えました(ウソ)。これで中途半端でモヤモヤした気持ちも晴れるというもの。現在読み進めている途中です。読み始めたら止まらない面白さ。
「世界最高の文学作品」などと言われると難しそうで手を出しにくいと思われる方もいるでしょうが、そんなことはありません。ストーリー性もあり、ぐいぐい引き込まれます。
一種のミステリー小説として読むことも可能でしょう。殺人事件が起こり、さあ犯人は誰だ?というお話でもあるので。
で、なぜそんなのが「世界最高」とまで評価されるのか。いろんな意見があるだろうが、私としては、人物描写、心理描写の緻密さ、複雑さのレベルが尋常ではない、という点にあると考える。(ほんとはまだいっぱいあるけどひとつあげるなら)
そして、それを表現する手法がこれまた独特であることだと思う。
例えば、一般に、自分が他人と会話すると仮定する。目の前にその他人がいるわけだが、その人が何を考えているのか、というのは本当は分からない。仮に俺は分かるぞ、と思っても、それはあくまでも自分の中にあるその人(自分がイメージするその人)を分かったつもりになっているだけである。じゃあ他人のことなど分からない、で済ましていいのかというとそうでもなく、相手と「会話」することによって互いに解釈をし合い、相手のイメージを自分の中に形成していく。
なんてことは一般生活ではあまり考えることはないと思うが、(大体毎日こんなことを考えながら生活してたら疲れてしょうがない。)この「カラマーゾフの兄弟」という作品は、登場人物全員が、自分が思っていることと他人が思っていることが異なること、自分が他人をこう思っているとしてもそれは所詮自分がそう思っているだけで実際はそうではないことがあるということ、そしてさらにそんなことは分かってるさ、と登場人物にしゃべらせること。これにより会話の緻密さ、ここから漏れ出る性格描写の凄まじさが他の小説とは一線を画している。そしてその徹底度合いが半端ではない。
具体的に一部引用。
「おまえのミーチャとか言ったが、それはおまえはミーチャが好きだからだ。お前はあいつが好きだ、でもお前があいつが好きだからといて、べつに心配しているわけではない。だが、もしイワンがやつを好きだったとしたら、イワンがやつを好きだってことで自分の身が心配になるだろうな。」
「こちらにうかがうたびに、あなたはいつも、『また告白しなかったのか』といった好奇の色を浮かべてわたしをごらんになる。もう少し待ってください。そう軽蔑なさらないでください。あれを決行するのは、あなたが思うほど簡単じゃないんです。ひょっとしたら、わたしはまるで決行しないかもしれませんし。そうしたら、あなたはわたしを密告なさらないでしょうか、どうです?」
「あたしのことどうか怒らないで。あたし、ほんとうにばかなんです。なんの値打ちもないんです……アリョーシャのほうが正しいんです。こんなおかしな子ですもの、うちに来たがらなくたって、ほんとうにむりもないんです。」
といった調子で会話が進んでいく。
え、やっぱり疲れる?そんなこと分かってるさ、でもね読んでみたらそんな不安吹き飛びますよ。こんなこと言ったってあなたは信じちゃくれないでしょうがね。いえ、冗談ですよ。そのくらいあなたほどのお方ならお分かりでしょう。
- 作者: ドストエフスキー
- 出版社/メーカー: 光文社
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カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)
- 作者: ドストエフスキー,亀山郁夫
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