魍魎の匣 コミックス版
京極夏彦原作のミステリー、『魍魎の匣』のコミックス版である。原作が発表されたのは1995年。ああ、もうそんなに経つのね。
「匣(はこ)」というキーワードを中心に、
・列車事故で重症を負った少女が担ぎこまれた「匣」型の奇妙な医療施設。そしてその少女の誘拐事件。
・連続バラバラ殺人事件。手や脚が「箱」に入れられて発見される。
・「筥(はこ)」を背負った姿で徐霊を行う霊能力者、「穢れ封じ御筥様」 金銭を彼に巻き上げられ、被害者急増中。
という事件が平行して発生。主人公たちは事件に巻き込まれていく。
原作は約1000ページの大作であり、これを漫画化することなんてできるのだろうかという疑問がまずあり。
あの高密度な語り、そして幾重にも絡んだ伏線。そのまま再現したらきっとコマの中が文字で埋まってしまう。やたら説明的な漫画を見ても面白くないし。
それでも本作品をビジュアル化してほしいという願いがあって。
それは冒頭のシーンを絵で見たい、ということに尽きる。小説内小説での汽車のシーン。あの非日常的、かつ幻想的なシーンをどう再現するのだろう。再現できるはずがない、でもして欲しい。という欲求があって。
結論としては上出来です!すばらしいです。
冒頭部分に限らず、本コミックの原作再現度は異常といってもいいくらいです。話の筋もしっかりしているし、押さえる所はきっちり押さえている。宗教者、霊能者、占い師、超能力者の違いを解説するシーンをそのまま持ってくるとは思わなかった。しかも漫画のほうが分かり易くなってるし。
まだ2巻までしか出ていなくて、序盤から中盤にさしかかったくらいですが、はやく続きを出して欲しいものです。
原作
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/09/08
- メディア: 文庫
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自分は本作品の何に惹かれるのだろう、と考えてみた。
なぜ人は犯罪を犯すのか。なぜ人を殺め、バラバラにするのか。それに対するアプローチが他のミステリー小説とは一線を画しているからだと思う。主人公は探偵ではない。推理して犯人を挙げることが結論ではない。いや、そもそも「犯人」って何だ?あらかじめ悪意のある人間がいて、計画を立てて計画通りに犯罪を犯す。そんな安易な構造を望むから犯人が生まれ、そして探偵が生まれたのではないか。探偵とは物語を読者の望むレベルで物語として成立させるために作られた装置なのではないか。
だから、主人公が探偵ではなく、そして安易な「事件解決」などを指向しない本作品は、ミステリーというより、アンチミステリー、メタミステリーというべきなのではないか、とか思ったり。